もしかすると誰もが心の奥底で、こんな安室奈美恵を待ち望んでいたのではないだろうか。ニューシングル『Red Carpet』の優しくも力強い歌声を聞きながら、ずっとそんなことを考えている。
 オルタナティブな匂いのするギターとベースの音色で始まるタイトル曲「Red Carpet」。曲名からつい、アッパーなセレブリティ・ポップスを想像してしまいがちだが、実際はその真逆。美しいメロディと生演奏感ある温かなサウンドと共に、スポットライトを浴びて輝く彼女の”独白”めいた言葉があふれ出す、ミドルテンポの染みるネオソウル・チューンだ。
 ここで歌われているレッドカーペットとは、それぞれが歩むその人自身の”人生”のこと。赤い絨毯の上を歩くスターのように、誰もが自身の人生の主人公であり、VIP(Very Important Person)。人生というレッドカーペットの上で、誰と出会い、どんな道を選ぶかはすべて自分次第。恋愛や友情、家族や仕事、叶えたい夢など、愛やプライドの形も人それぞれ。けれど、愛というドレスを纏い、プライドという最高のジュエリーで輝けば、その先にどんな未来が待っていたとしても、きっといつかは必ず乗り越えられる。つまりこれは、安室奈美恵からすべての”君”に捧ぐ人生のアンセム、なのだ。
 そしてもうひとつ。これは、ステージの上でスポットライトを浴びながら、多くを語ることなくただひたすらに歌い踊る、孤高のシンガー自身の歌でもある。彼女はなぜ、どんな苦境の時もステージの上で輝き続けてこれたのか? それは、目の前にいるオーディエンスという”君”がいてくれたからこそ。それこそが彼女のプライドであり、ただひとつの真実。つまり「Red Carpet」は、さまざまな雑音にも惑わされず、彼女とその音楽を信じてくれたファンに宛てた、安室奈美恵からのラブレターでもある。
 打って変わってc/w「Black Make Up」は、まさにライブ映えすること間違いなしのR&Bテイストのアッパーなダンスナンバーだ。RedとBlackという対称的な曲タイトルが象徴するように、色をキーワードにした言葉遊びを織り交ぜた歌詞とファンキーに弾むビートが痛快な1曲。「Hey!」というコーラスを、アリーナ中が笑顔でシンガロングしている姿が思い浮かぶ。
 いずれの楽曲でもまず気づくのが、大半の歌詞が日本語で歌われているということ。とくに「Red Carpet」はほぼ日本語詞のナンバーであり、さらに、バンドサウンド風の生演奏感あるトラックも特筆すべきポイントだ。オール新曲、かつ発売当初はノンタイアップ。そんな安室奈美恵にしか成し得ないスタイルでリリースされ、プラチナセールスを記録し、オリコンチャート週間1位も獲得した11thアルバム『_genic』。英語詞を軸に彼女流のEDMを追求したあの画期的な一枚を経て、『Red Carpet』は、安室奈美恵の新たなステージがまたここから始まるであろうことを予感させてくれる。

<強がったけど/何ひとつもう隠さず/見せるからtruth>「Red Carpet」

<I'm gonna draw my pain for you>「Black Make Up」

 対称的な曲の中でそう宣言する安室奈美恵には、もう恐れるものは何もない。そんな彼女のように、「Red Carpet」のミュージック・ビデオも、自らの手で未来を選び、切り開くことが出来るインタラクティヴな手法で楽しめるものになっている。「Golden Touch」「Anything」に続く映像面での冒険も併せて、安室奈美恵の次なる一手は、最高に優しくて美しく、力強い。

text/早川加奈子